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トレーニングの7原則

トレーニングの7原則

PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー 岩田勇樹 |

「すべての器官は適度に使えば機能的にも形態的にも発達するが、使いすぎれば発達は損なわれるし、使わなければ機能も形態も低下していく」
Wilhelm Roux 1850 1924


このように、1世紀以上も前から人の身体は適度な負荷を加えることでより向上し、過度な負荷が掛かれば 逆に 体は衰退し、使わなければ 使わないで、そちらも 衰退してゆく ということが証明されてきました。
「トレーニングの原理・原則」は、多くの研究成果や実践成果をもとに築かれたトレーニング科学理論における基礎的法則であり、多数の著書・解説書の中で記述されています。
しかし「原理・原則」については著者や研究者の表現によって多様であり 統一されていません。
今回はトレーニングの効果を得るために、どのような法則に従って取り組むとよいかを、「トレーニングの7原則」としてまとめました。
トレーニングの効果を より 得るためのヒントとなれば嬉しく思います。

 

【トレーニングの7原則】

1.過負荷の原則

2.漸進性の原則

3.継続性の原則

4.特異性の原則

5.自覚性の原則

6.個別性の原則

7.全面性の原則

 

1.過負荷の原則(オーバーロードの原則)

普段から身体にかかっている負荷よりも強い負荷でトレーニングをしなければ体力は増加 しません。ウェイトの数値だけでなく、自重トレーニングの際の可動域、バランスなども考 慮する必要があります。

ウェイトトレーニング、柔軟性トレーニング、敏捷性トレーニングなど、全てのトレーニン グカテゴリーにおいてこの原則は成立します。過負荷にならず減負荷になれば日常生活だ けでなくスポーツパフォーマンスも低下してしまいます。

例えば筋力トレーニングにおいては、自分の最大筋力の20~30%の筋力を発揮するトレーニングでは筋力は低下もしませんが増加もしません。ですので最大筋力20%以下の筋力しか発揮しないトレーニングでは、トレーニングを行っても筋力は低下していってしまいます。最大筋力の40~50%以上 の筋力を発揮するトレーニングをする事で、筋力は向上していきます。

普段からランニングを習慣化していた人がウォーキングに変えてしまえば、筋力だけでな く筋持久力や心肺持久力など全ての要素が低下していってしまうのです。

 

2.漸進性の原則

トレーニングの強度・時間は段階的に増加すべきであり、急激に増加させてはいけません。急激な増加により運動障害が発生するので、急激な増加なのか、それとも段階的な増加なのか、その人の身体能力、体組成、運動経験によってその幅を変えなければいけません。

例えば、40kg のベンチプレスを10 回やっとできた人が、じゃあ次は 100 ㎏のベンチプレスに挑戦しようとはならないように、5 ㎞を走ったことが無い人が突然フルマラソンの42.195 ㎞をチャレンジしてしまうと、完走することができたとしても、なんらかの障害につながる可能性があります。

これはフィジカル面だけでなくメンタル面でも同じことが言えます。

いきなり 4段5段のステップを登るのではなく、1段1段をエラーなくステップアップすることができるかを評価し、できるかできないか 50%50%の負荷チャレンジを繰り返していくことで、適切な効果を得ることができます。

 

3.継続性の原則

長期間に渡りトレーニングを継続しなければ、目に見えた効果は現れません。これは反復性や可逆性と表現されることもあります。
性別、運動歴、既往歴などにより差はあるものの、見た目にはっきり分かるほどの筋肉の変化は、最低でも3ヶ月はハードなトレーニングを積まなければ現れません。

人間の身体には「ホメオスタシス(恒常性)」といって、生物の体内環境を一定に保とうする性質があります。人間は環境に適応しようとする生き物なため、繰り返しの刺激が掛かり続けることで体内環境を変化させ始めますが、その刺激が止んでしまうと刺激が入る前の元の状態に戻ろうとしてしまいます。

継続的かつ漸進的に、適度な刺激を鍛えたい組織に与えていくことが重要になります。

 

4.特異性の原則

トレーニング効果はトレーニングをしたようにしか高まらない、すなわちトレーニングで 行った関節可動、収縮形式、速度でしか筋力は発揮しません。

例えば、いくらピッチングフォームをコーディネーションさせるトレーニングをやり続け たとしても、マラソンのタイムを最大限に引き出すことは出来ないですし、ウェイトリフティングの最大重量を引き出すことも出来ません。

その競技ごとに求められる体力要素は異なるため、他の競技が取り組んでいることだからといって、目的を履き違えて取り組んでしまうと、それは時間の無駄となってしまいます。

 

5.自覚性の原則

トレーニングを行う目的をよく理解して行わなければ、目的の効果は得られないことが多 いです。なぜそのトレーニングを行う必要があるのかを理解せず、ただこなすだけのトレーニングでは、効果は出ないばかりか逆に悪化することもあります。

例えばスクワットは鉛直方向にコントロールされた動作で重心を上下に移動させながら筋力を発揮するという種目ですが、単純に立つしゃがむ動作の繰り返しと認識を誤ってしまうと、身体の軸はブレ続け、目的とする体力要素も得られなくなります。(思わぬ箇所が筋肥大する可能性もあります。)

意識性とも言われますが、特定の部位・筋に対して意識を向けるだけでなく、実施するトレーニングの目的を理解して取り組むことが重要になります。

 

6.個別性の原則

個人差に応じたトレーニングを行なう必要があります。

性別・年齢・身体組成・障害など様々な要素が個人差を作っていますので、一定の計算式では当てはまらないこと方が多い為、それらの数値はあくまでも「ベースとなる指針」として捉えるべきです。

例えば、最大心拍数を導き出す公式に「220-年齢」という計算方法がありますが、この「ベ ースとなる指針」は全ての人に当てはまるという認識を持たないことは大切です。

とは言え一つの指針がなければ何を基準にしたら良いか分からないと思いますので、その数値は目安として捉えることは重要です。

同じ性別、同じ年齢だとしても、筋力や柔軟性だけでなく全ての体力要素は異なるため、 個々に合った適切な負荷をかけるとこが重要です。

 

7.全面性の原則

可能な限り、全ての体力要素を高めるトレーニングをしなければなりません。

例えば死ぬまで自分の足で歩きたいとすれば、下肢の筋力だけでなく、心肺機能、バランス 力、柔軟性、全ての要素が必要です。

自分の足で歩き続けるにしても、スポーツパフォーマンスを向上させるにしても、筋力だけ を鍛えるのでは目的の達成は難しくなります。

例えば、「パワー」は筋力量が増えるだけでは向上しません。

「パワー = 筋力×速度」と定義され、パワーとは瞬発的な力を発揮することです。ジャンプなどの瞬間的動作には筋力と速度の両方が必要です。スポーツや日常動作は、筋力×速度=パワーの元に成り立っています。

筋力トレーニングやスピードトレーニング、柔軟性トレーニングなど個々の体力要素を伸ばす術はどれか一つと好き嫌いせずに取り組むことが体力の向上へと繋がります。

 

以上の7つのトレーニングの原則に則ってトレーニングを行うことで、より効果的なトレー ニング効果を得ることができるでしょう。