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運動による免疫力向上について

運動による免疫力向上について

PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー 岩田勇樹 |

昨今、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の脅威により、手洗いうがいはもとよりマスク常備が当たり前という時代となってしまいました。
わが国の憲法第25条では次のように「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と謳っており、国民の健康が人権として捉えられています。
ワクチン接種などの権利は保障されているものの、自らの健康管理においては自らが意識を持って努めなければならなりません。

感染とは通常、病原体が体内に侵入して増殖することであり、数多くの微生物の中でヒトに疾病を生じさせるものを病原性物と呼びます。主として、真核生物である「原虫」や「真菌」、原核生物である「細菌」、および「ウィルス」があり、これらの感染によって引き起こされる感染症や寄生虫、癌といった病原体に打ち勝つには、己の免疫力を高めておく必要があり、適度な運動・バランスのとれた食事、質の高い睡眠が不可欠となります。

 

「免疫力」とは病原体などの異物に対して自らを防御するしくみで、生体防御機構が備わっています。生体防御機構は自然免疫と獲得免疫の2つに分けられ、それぞれ病原体を貪食、排除といった抗体の働きしています。

早稲田大学スポーツ科学学術院 教授 鈴木克彦氏による論文から引用すると、健康増進の為に推奨される運動の条件は、有酸素運動の強度、すなわち※(1)最大酸素摂取量の50~60%ないし無酸素性作業閾値以下で1日20~60分週3回以上を目安に長期間継続することを推奨しています。
この適度な運動の効果として「血液やリンパの流れが良くなる」ことに伴い、免疫細胞の循環が効率化し抗体機能が向上し、さらに運動により体温が上がることで、免疫細胞がはたらきやすくなる効果があり、適度な運動は血液循環と個々の免疫細胞の働き双方によって効果をえることが研究の成果から証明されています。

※(1)最大酸素摂取量とは「1分間に体内に取り込まれる酸素の最大量」
最大酸素摂取量は心臓のポンプ機能や血液運搬、骨格筋、肺拡散能力などが関連するため、いわば全身組織の総合力ともいえます。

 

上記の研究結果で、適度な運動を実施することで免疫力の向上をすることができるということが分かりますが、逆に最大酸素摂取量の60%以上の強度の高い運動を続けると、交感神経が優位になり血液中の活性酸素が増え過ぎてしまい、免疫力を下げてしまいます
「アスリートは風邪を引きやすい」などと言われることがありますがこれは事実で、激しい運動により体内では頻繁に筋線維の破壊が起こるため、自分の身体をあまり攻撃しないように(炎症反応を起こさないように)なっています。その分、病原体が侵入してきた時も攻撃する反応も弱くなるようです。つまり、免疫系の反応が鈍くなっていることで感染症を引き起こしやすくしています。身体を酷使することで疲労状態であったり、または栄養状態が悪かったりすることも免疫系が働きにくくなります。

しかし勘違いしてしまってはいけないことは、免疫力を高めることができるのはあくまで、いま持ったキャパシティの中での50~60%の運動強度ということです。
免疫力そのもののキャパシティを高めるには、60%以上の運動強度で有酸素運動能力の最大酸素摂取量を高める必要があります。その際、一時的に免疫力は下がる可能性はありますが、最大酸素摂取量50~60%の運動をやり続けるだけでは免疫系の能力キャパシティは高まることがありません。

 

 

「免疫力向上」するためには最大酸素摂取量すなわち、全身持久力を向上させることが重要になります。キャパシティを向上させる為に一時的な免疫力の低下は考えられる為、その際は運動だけでなく、同時に睡眠や栄養コンディションを整える必要があり、また有酸素運動だけでなく筋力トレーニングも行うことで、筋温の向上により免疫系の働きが活発になる
と考えられます。

また免疫力の低下には疲労の蓄積や体温の低下だけでなくストレスによる自律神経の乱れが大きく影響しています。
身体、心の緊張は交感神経を優位にさせますが、実は私たちの感情の中で「泣く」「笑う」という行為には、精神的なストレスで傾いた自律神経を是正する作用があります。その結果、免疫力が大いに高まると言われています。笑うことで副交感神経も刺激され自律神経のバランスが整います。副交感神経は血流を促進して体温を上げる働きがあるので、大笑いした後に体温が1度あがることが研究で示されています。免疫力を低下させないためには、体温を低下させないことが重要です。体温が1度上がると免疫細胞のリンパ球が増えて活性化し、免疫力が20~30%上がるとも言われています。心のそこから笑えなくともつられて笑ったり、作り笑いで笑ったりするだけでも副交感神経系は優位になります。

 

栄養面において、「免疫力を高めるためにサプリメントを使うのはどうなのか?」という質問をいただくことがありますが、サプリメントは栄養補助食品であり短期的な補助のものとなります。
サプリメントは腸で消化をする必要がありませんので、長期的にサプリメントに頼って腸の機能をサボらせてしまうと、腸の消化能力が落ち栄養の消化・吸収能力が落ちてしまいます。若いうちは良くても年齢を重ねてから後悔することになりかねません。
身体の機能もしっかりと活用できるバランスの取れた食事を心掛けることを優先し、サプリメントは不足してしまった時に「栄養の補助」として活用するようにしましょう。

 

 

【免疫力向上の為の運動案】

①免疫力向上の為にまずは全身持久力のキャパシティを向上しよう!

Level1:(220-年齢-安静時心拍数)× 60~80% + 安静時心拍数 = 目標心拍数
Level2:(220-年齢-安静時心拍数)× 80~90% + 安静時心拍数 = 目標心拍数
※体力に自信がないという方は、まずはLevel1から取り組み慣れてきたらLevel2に臨みましょう


②今の自分が持つ体力要素で免疫力を活性化させよう!

(220-年齢-安静時心拍数)× 50~60% + 安静時心拍数 = 目標心拍数


③筋肉量を増やして熱産生能力を向上させよう!

筋肉には体温を調節する働きがあり、熱エネルギーを作り体温をあげていきます。
体温が低い状態では免疫力も落ちてしまいます。筋肉をつけることによって熱産生能力を向上させ、免疫力を強化させましょう。

 

最後に「免疫能力」は、エネルギーを作り出す能力を高めておくことと、体温を維持し自律神経を崩さないよう整えておくことが重要です。この2つを意識しておくことによって、自己治癒力という誰にでも備わっている能力をしっかりと働かせることができるようになり、感染症の原因となる病原体に打つ勝つことができるはずです。

 

参考文献
免疫と運動 早稲田大学スポーツ科学学術院 教授 鈴木克彦
これからの健康科学 第5班 著書 森下玲児
ザ・免疫力 Part3 著書 ドクター塚本
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット