筋トレだけでは物足りなくなってきた、という感覚
「重量は伸びている。見た目も変わってきた。でも、何かもう一歩踏み出したい」。そんな気持ちを抱えているトレーニーが、じわじわと増えてきています。海外のフィットネスシーンでは、ここ数年で「強さ」の定義そのものが少しずつ変化しています。バーベルを高重量で持ち上げられること、だけが強さではなくなってきた。「動ける強さ」、つまり筋力と持久力を同時に発揮できる身体への関心が、確実に広がっています。
HYROXとは何か
HYROX(ハイロックス)は、2017年にドイツで生まれた競技フィットネス大会です。フォーマットはシンプルで、1kmのランニングと1種類のワークアウトを交互に8セット繰り返すというもの。合計8kmのランと、スレッジプッシュ・ロウイング・バーピーブロードジャンプなど8種類のワークアウトを、すべてこなして初めてゴールできます。2017年の誕生から約10年足らずで、現在は60カ国以上で開催されるまでに規模が拡大しました。ルールが統一されているため、世界中のどの大会に出ても同じ条件で記録が比較できる点も、競技としての魅力になっています。
なぜここまで注目されているのか
HYROXが多くのトレーニーを惹きつける理由は、「筋力だけ」でも「有酸素だけ」でも通用しないという設計にあります。ウェイトトレーニングで培った出力と、長距離を走り続けられる心肺機能、その両方が試されます。どちらか一方を鍛えてきた人ほど、もう一方の壁を実感する。それが「次の課題」として機能し、競技として面白いと感じさせる仕掛けになっています。また、観戦・参加・コミュニティが一体になった文化も大きな特徴です。エリートアスリートだけが出る大会ではなく、一般のトレーニーが同じステージで汗をかき、互いに応援し合う雰囲気が定着しています。
筋トレをベースにしている人との相性
日頃からウェイトトレーニングに取り組んでいる方にとって、HYROXは決して無縁のものではありません。スレッジを引く・プッシュするといった種目では、脚や体幹の筋力がそのまま活きてきます。高重量トレーニングで鍛えた出力は、確実にアドバンテージになります。ただし、「1kmランってそんなに長くないでしょ」と思っていると、それを8セット繰り返した時に心肺が悲鳴を上げます。筋肉はあっても、心拍数が下がらないという壁にぶつかる人が多いのも事実です。筋トレの土台は活きる。ただし、心肺能力も同時に問われる。それがHYROXの正直なところです。
HYROXについて知っておきたいこと
- 現在60カ国以上で大会が開催されている
- 筋力と持久力、両方が必要な設計になっている
- 競技経験がなくても参加できる形式が用意されている
- タイムより完走を目標にする参加者が主流
- コミュニティ文化が強く、応援・交流が盛ん
「動ける強さ」を持つことの意味
HYROXというフォーマットそのものに参加するかどうかは別として、「筋力と持久力を両立させた身体をつくる」という方向性は、トレーニングの質を一段引き上げるヒントになります。重量が伸びる喜びとは別に、身体全体が機能的に動けるという手応えを感じる。それが次のモチベーションになっていく。海外で広がっているこの流れは、筋トレを続けてきた人にとって、とても自然な「次のステージ」の一つだと私たちは感じています。今の自分のトレーニングに、何か新しい視点を取り入れてみたいと思ったとき、HYROXはひとつの参考になるはずです。